みなさんこんにちは、ひでえぬです。
今日も1級FPの実技試験の問題を解いてみましょう。
20問全部できるかどうかわかりませんが、とりあえずできるところまでお伝えしようと思います。
今日はこの問題です。
問17
寛子さんの兄の直人さんの2021年における所得の金額等が下記<資料>のとおりである場合、直人さんの2021年の所得税の計算上、総所得金額に算入すべき金額として、正しいものはどれか。なお、記載のない事項については一切考慮しないものとする。
1. 95万円
2. 355万円
3. 375万円
4. 440万円
(解説)
総合課税の所得税額について、計算方法における損益通算についての問題です。ここでは、計算方法というより、損益通算を含めた課税対象額の計算順序が重要となります。
この問題の場合、
- 各所得ごとに所得金額を計算する
- 損益通算を行う
- 所得控除を行う
という作業が必要となります。
2と3の順番を間違えると正解できません。
1 各所得ごとに所得金額を計算する(総合課税に対象となるもののみ)
(1)事業所得
事業所得は総収入(ここでは売上高)から必要経費を引いたものが所得金額となります。
1,200万円-650万円=550万円
(2)不動産所得
不動産所得についても総収入金額から必要経費を引いたものとなりますが、ここで1つ注意しなければならないことがあります。
不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地等を取得するために要した負債の利子の額は、不動産所得の計算上必要経費になりますが、不動産所得の金額が損失(赤字)となった場合には、その負債の利子の額に相当する部分の損失の額は生じなかったものとみなされ、他の所得金額との損益通算はできません。
国税庁HP(タックスアンサーNo.2210)より
ここで問題文をよーく見ると、備考欄に
必要経費には土地の取得に要した負債の利子20万円が含まれている。
という一文があります。
よって、不動産所得の必要経費は
580万円-20万円=560万円
となります。
不動産所得=総収入金額-必要経費なので、
450万円-560万円=▲110万円
となります。
(3)譲渡所得
譲渡損失として▲280万円が計上されています。
2 損益通算を行う
損益通算の対象となるのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つです。「ふじさんじょう」と覚えましょう。
さて、ここで問題となるのは譲渡所得ですが、譲渡所得は以前お伝えしたように、
土地建物と株式は分離課税、それ以外は総合課税
となりますので、この問題では譲渡損失として▲280万円が計上されていますが、分離課税となりますので、ここでは対象になりません。
よって損益通算後の税額は、
550万円+(▲110万円)=440万円
となります。
3 所得控除を行う
本来ですと所得控除の前に「損失の金額の繰越し又は繰戻し」があるのですが、今回は該当するものがないので省略します。
所得税の計算方法は全部覚えるのはなかなか大変ですが、少なくても、
「損益通算→所得控除→税額控除」
の順番は、必ず覚えましょう。要は、
- 所得控除は税率をかける直前に行う。
- 税額控除は税率をかけた後に行う
ということです。
また、損益通算や損失の金額の繰越し又は繰戻しと所得控除の順番を間違えると、場合によっては最終的に次年度に繰り越すことができる損失の額が変わってしまう(実際よりも多くなる)ので、注意が必要です。
さて問題に戻ります。問題文の一番下に
・ 直人さんは65万円の青色申告特別控除額の適用要件を満たしている。
とありますので、こちらを控除することとなります。
したがって答えは、
440万円-65万円=375万円
となり、選択肢3が正解となります。
ちなみに私は、
必要経費には土地の取得に要した負債の利子20万円が含まれている。
という部分を見落としてしまい、
自信をもって2と解答し、間違えました。
落ち着いてやれば解けたのにね。
では、また