みなさんこんにちは、ひでえぬです。
FP1級の実技試験の過去問を解いていて、「譲渡所得」についての記憶があいまいなことに気が付きました。
FP1級の実技試験で求められる知識としてはFP2級+αでいいのですが、それすらも怪しい。
おそらく、CFP資格審査試験で、「上場株式等の損益通算」の問題がよく出るのですが、たくさんやりすぎて、他の部分の記憶が抜けてしまったんだと思います。
これでは困るので、一度覚えたところとはいえ、もう一度整理してみようと思います。
まず、譲渡所得における「課税譲渡所得」の計算の仕方ですが、
課税譲渡所得=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 ・・・①
となり、分離課税の場合は税率をかけて税額を算出し、総合課税の場合は課税総所得金額に合算します。
なお、この記事では、復興特別所得税は考慮しないこととします。
譲渡所得の計算の仕方は、その財産の種類によって、大きく3つに分かれます。
- 土地・建物:分離課税
- 株式等:分離課税
- それ以外:総合課税
では、それぞれについてみてみましょう。
土地・建物の場合(分離課税)
課税譲渡所得=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 ・・・①
総収入金額
試験対策として考えれば、ここは「売却金額」と考えて差し支えないと思います。
譲渡費用と取得費
ちょっとややこしいですが、このうち、譲渡費用は「売った時にかかった費用」で、取得費は「買ったときにかかった費用」です。当り前じゃないかと思われるかもしれませんが、最初にここをきっちり認識しておかないと、混乱するので、あえて書いときます。
譲渡費用とは、売った時にかかった費用のうち
仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、立退料や取り壊し費用など
が該当し、
取得費は、売った土地を買ったときにかかった費用のうち、
購入代金や建築代金、購入手数料や設備費、改良費など
登記費用や登録免許税、不動産取得税や印紙税も対象になります。
ちなみに上には書きませんでしたが、購入するにあたって立退料などが発生した場合も対象になります。
売却時に発生した立退料は「譲渡費用」、購入するときに発生した立退料は「取得費」となるわけです。
特別控除については、土地・建物については該当する場合にのみ対象となります。(最高5000万円)
所有期間
取得してからどれくらい所有していたかによって、分離長期譲渡所得と分離短期譲渡所得に分けられます。
所有期間5年超の場合=分離長期譲渡所得
課税譲渡所得×(15%+5%)=税額
所有期間5年以内の場合=分離短期譲渡所得
課税譲渡所得×(30%+9%)=税額
( )の中は税率ですが、左側(青色)が所得税、右側(緑色)が住民税です。
このように計算されますが、ここで注意したいのは「所有期間」の計算の仕方です。
土地・建物にかかる譲渡所得の場合、取得した日から譲渡した年の1月1日時点で、5年を超えているかどうかで判断します。
例えば、本日(2021年8月31日)に譲渡した場合、以下のとおりになります。
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株式の場合(分離課税)
こちらについては、ここでいう「株式」とみなされるものには債券や投資信託など幅広いものがあり、また上場株式等の配当の損益通算などのいろいろな特例がありますが、細かく説明するとこれだけで1回分以上になっちゃうので、なるべくさらっとやります。
課税所得金額は、
課税譲渡所得=総収入金額-(取得費+手数料等) ・・・②
取得費、手数料等(必要経費)
ここでは購入したときの株式の価格の他に、購入手数料等があればそれも含みます。
税率は合計で20%(所得税15%、住民税5%)ですので、
税額=課税譲渡所得×(15%+5%)
となります。
それ以外の場合(総合課税)
「それ以外」ですので、対象になるものは様々ですが、試験対策としてよく出てくるのは、絵画や骨董などが該当します。
課税譲渡所得=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除(50万円) ・・・③
取得費
一般に購入費用のことを指します。購入に際して、手数料等がかかったときはそれも含みます。
譲渡費用
売るために直接かかった費用のことです(下記国税庁HPより)不動産だと登記費用とか税金とかいろいろあげられるのですが、それ以外の財産だとあまり思いつかないなあ。ちなみにCFP資格審査試験なんかですと単に「譲渡費用20万円」とか出てきます。
特別控除
50万円まで控除できます。(詳しくは後ほど)
この場合についても、所有期間に応じて、短期所得と長期所得とに分ける必要があります。
所有期間5年超の場合=総合長期譲渡所得
所有期間5年以内の場合=総合短期譲渡所得
となります。
ここで注意したいのは、「所有期間」の判断方法が、土地・建物と異なることです。
こちらの譲渡所得の場合、取得した日から譲渡した日時点で、5年を超えているかどうかで判断します。つまり普通に計算するわけですね。
先ほどと同様、本日(2021年8月31日)に譲渡したとして、図に書いてみるとこんな感じになります。
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このように総合長期譲渡所得と総合短期譲渡所得を区別して計算し、給与所得や事業所得などと合算しますが、その際に総合長期譲渡所得については2分の1にしてから合算します。
課税譲渡所得合計額=課税譲渡所得(長期)×1/2+課税譲渡所得(短期)
特別控除について
譲渡益「総収入金額-(取得費+譲渡費用)」の部分が50万円に満たない場合は、その金額までしか引けません。
総合長期譲渡所得と総合短期譲渡所得の両方がある場合、まず、短期譲渡所得から最大50万円を控除します。なおかつ控除しきれない場合について、長期譲渡所得から控除します。
(例題1)
ひでえぬさんは2018年12月25日に購入した美術品を本日(2021年8月31日)に500万円で譲渡しました。取得費が400万円、譲渡費用が80万円としたとき、譲渡所得はいくらになるでしょうか。
(解答1)
所有期間5年以内ですので、総合短期譲渡所得となります。
課税譲渡所得=500万円-(400万円+80万円)-50万円となりますが、譲渡益500万円-(400万円+80万円)=20万円ですので、特別控除は20万円までしか引けません。
よって、
500万円-(400万円+80万円)-20万円=0円
が正解です。
(例題2)
ひでえぬさんが例題1で譲渡した美術品の他に、2016年7月15日に購入した骨董品も、本日(2021年8月31日)に1000万円で譲渡しました。取得費が700万円、譲渡費用が100万円の時、譲渡所得はいくらになるでしょうか。
(解答2)
骨董品の所有期間ですが、2016年7月15日から本日(2021年8月31日)までは5年を超えますので、長期譲渡所得となります。よって短期譲渡所得と長期譲渡所得とが混在しますが、
解答1より、短期譲渡所得は
500万円-(400万円+80万円)-20万円=0円
として、先に短期譲渡所得から特別控除を適用します。
残った特別控除額は 50万円-20万円=30万円ですので、
長期譲渡所得の額は
1000万円-(700万円+100万円)-30万円=170万円となります。
長期譲渡所得の額は1/2してから合算するので、他の所得に合算する譲渡所得の額は
0円+170万円×1/2=85万円
となります。
ちなみに・・・
こうやると間違いですが、先に長期譲渡所得から特別控除を適用すると
1000万円-(700万円+100万円)-50万円=150万円となります。
短期譲渡所得は、特別控除がもうないので、
500万円-(400万円+80万円)=20万円
となります。
長期譲渡所得の額は1/2してから合算するので、他の所得に合算する譲渡所得の額は
20万円+150万円×1/2=95万円
となり、先に短期譲渡所得を控除したほうが納税者に有利となることが分かります。なので、「納税者に有利な計算方法」として覚えてしまうのも1つの手です。
まとめ
もうちょっとシンプルに書けたらなと思いましたが、思ったよりも長くなってしまました。
重要なところをまとめると、
- 分離課税の場合(土地建物、株式)と総合課税の場合(それ以外)がある
- 所有期間の判定方法が2種類ある
土地建物の場合:取得した日~譲渡した年の1月1日
それ以外の場合:取得した日~譲渡した日
ちなみに、どちらも5年ちょうどは「短期譲渡所得」となります。
これで、すっきりしました。
では、また。