みなさんこんにちは、ひでえぬです。
投資信託の個別元本の計算について、前回から少し時間が経ちましたが、改めてお送りします。
前回の復習はこちら。
では、今回の問題です。
CFP資格審査試験の過去問では投資信託について、購入と解約を通して、譲渡所得やトータルリターンを計算で求める問題はよく見かけますが、通常は「1回購入して、しばらく持っていて分配金をもらい、その後解約した」というものがほとんどです。
今回の問題は、「複数回購入(追加購入)している」というのがポイントで、株式ですとそのような問題はあまり珍しくないのですが、「投資信託でも出るようになったか・・・」というのが私の印象でもあったため、
「もしかして6月にも出るんじゃ?」
と思ったので、今回取り上げることにしました。
(もし出なくても怒らないでくださいね)
(問題)
ひでえぬさんは、以下の条件で投資信託HNを購入し、収益分配金を受け取った。このとき、
- 2021年9月30日時点での個別元本
- 2021年9月30日を基準日として計算したトータルリターンの金額
を求めなさい。
なお、復興特別所得税は考慮せず、収益分売金の額は税引き後の額で計算すること。また、購入に際し手数料は考慮しないものとする。
(スマホの方見にくくてごめんなさい)
(解説)
個別元本について
なにやらいろいろ数字が並んでいますが、まずは時系列で考えることが重要です。
ということで、順を追ってみていきましょう。
2018.7.7
投資信託HNを、1万口につき10,300円で100万口購入しました。
よって基準価額は10,300円です。(1万口当たり。以後、特に記載のない限り1万口当たりの金額を表示します。)
2018.9.30
決算日です。収益分配金が支払われました。分配金の額は500円、分配落ち後の基準価額は10,000円です。分配落ち後の基準価額が個別元本10,300円を下回っているので、個別元本がその分減って10,000円になります。
図に書くとこうなります。
2019.2.1
年が明けて2019年、2月1日に追加購入しました。
この時、個別元本は株式と同様に、追加購入した投資信託の基準価額と、追加購入時点での個別元本の額を加重平均して求めます。
「追加購入時点での個別元本の額」というところがポイントで、株式の場合は最初に1.000円で買った株を1,200円で追加購入した場合、途中株価が変わっても、計算上は1,000円と1,200円で計算します(※)。例えば両方とも100株ずつ買った場合、
となりますが、投資信託の場合、その後の個別元本の動きも確認する必要があるということに注意しましょう。
で、どうなるかといいますと、最初に購入した投資信託HNの個別元本は10,300円から10,000円になっていますから、
よってこの時点での個別元本は10,500円となります。
2019.9.30
2回目の決算日です。
今度は分配落ち後の基準価額が1万円を割って9,900円まで下がってしまいました。
追加購入した時の個別元本が10,050円ですので、個別元本が修正されます。
上の図のとおり、個別元本は9,900円です。
2020.9.30
今回は追加購入がないまま3回目の決算日を迎えました。
分配落ち後の基準価額は10,000円です。
昨年の決算日時点での個別元本の額は9,900円で、現時点での基準価額はを下回っているので、個別元本の変更はありません。(9,900円のまま)
2020.12.1
2回目の追加購入が行われました。これも加重平均で求めますが、個別元本が最初の追加購入時から変更となっていることとに注意します。
式は
よって、この時点での個別元本は10,000円となります。
2021.9.30
4回目の決算日ですが、問題ではこの日の時点での個別元本をきいていますので、ここまで調べましょう。
分配落ち後の基準価額は10,200円です。この日の時点で個別元本は10,000円ですので、今回も個別元本の変更は行いません。
よって、この問題の答えは10,000円となります。
まとめ
とりあえず個別元本を求めてみました。
かなりの字数になったので、トータルリターンについては次回お伝えしようと思いますが、個別元本の計算に関しては、
- 決算時には個別元本を分配落ち後の基準価額と比較し、分配落ち後の基準価額<個別元本の場合は個別元本を変更(減らす)する。(この計算により個別元本が増えることはありません)
- 追加購入した場合は、株式の場合と同様に、加重平均により購入後の個別元本の額を計算する。ただし、個別元本の見直しを忘れずに。
なお、今回の解説ではわかりやすくするために、個別元本の計算については図を書いてみましたが、実際に本番の試験では、図を頭に描きつつ計算する方が時間の節約になると思います。
過去問を解いて、計算に慣れておくとよいですね。
※株式を分割や併合した場合は分割(または併合)後の1株あたりの株価は変わりますが、今回は株式の問題ではないので、そこまで深く考えないことにします。