みなさんこんにちは、ひでえぬです。
とある金融機関から、こんな広告が来ました。
ご存じない方に念のためお伝えしますと、ここでいう「ランド」というのは、ディズニーランドのランドでも、ランドクルーザーのランドでもなく、南アフリカ共和国の通貨のことです。
つまり、外貨預金のお誘いですね。
すごいですねえ、この超低金利の時代に、年60%ですよ。
これは儲かりそうですね。
ですが、
ちょっと待ってください。
本当に儲かるのか、よーく考えてみましょう。
(外貨預金のリスク)
外貨預金には様々なリスクがありますが、もっとも重要なもので、円預金にないものは「為替変動リスク」です。
為替相場は毎日変動するので、皆さんもご存じのように、1米ドルが110円になったり、120円になったり100円になったりします。まあ1日に10円も動くことはめったにないでしょうが、絶対ないとも言い切れませんし、少なくても日によって変わることだけは確かです。
もちろん、南アフリカランド(これ以降「ランド」と呼ぶことにします)も例外ではありません。むしろ米ドルよりも変動幅は大きいと思われます。
そのあたりは後半で触れることにして、とりあえず「年60%(税引き前)」というのが儲かるのか儲からないのか、数字で見てみましょう。
CFP資格審査試験の「金融資産運用設計」の過去問を解くと外貨預金の損益や利回りを答える問題が出ますが、そのやり方とおんなじです。
1ランド=7.77円
となっていますので、これを基準に計算しましょう。
(例題)
ひでえぬさんが手持ちの現金から、円をランドに換えて10万ランド預け入れ、1か月後に元利合計額を再び円に換えて受け取った場合にいくらになるのか計算してみましょう。
(解説)
まず、円を10万ランドに換えますが、実はこの時のレートは7.77円ではありません。
ご存じの方も多いと思いますが、円をランドに換えるときも、ランドを円に換える時も手数料がかかります。(だいたい片道〇〇円という表示がされます。)
ランドの場合、為替手数料は金融機関によって異なりますが、ざっと調べたところ、片道0.1円から0.25円くらいのようです。ここでは片道0.15円として計算しましょう。
よって円→ランドのレートは7.77+0.15=7.92円/ランドとなりますので、
10万×7.92=792,000円
これが元手(元本)となります。
次に、10万ランドにつく利息を計算しましょう。
まず金利ですが、年60%ですので、1か月ですと
60%×1/12=5%/月
となります。
ここで「おや?」と思った方もいるかと思います。
金利は普通年利で表示するので、年60%というのが不当な表示ではないと思いますが、今回の場合もらえる金利はあくまでも5%分です。
しかも税引き前ですから、ここから利子所得として所得税と住民税が引かれます。
ちょっと計算してみましょう。
税引き前の利息は、
10万ランド×60%×1/12=5,000ランド
利子所得の税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。
CFP資格審査試験の問題では、便宜上復興特別所得税(所得税1%につき0.15%)は考慮しませんでしたが、ここでは正確さを期すために計算に入れています。
よって、
5,000ランド×20.315%=1,015.75ランド
税引き後の利息は、
5,000-1,015.75=3,984.25ランド
となります。
よってランド建ての元利合計は
10万+3,984.25=103,984.25ランド
ですね。
(今回は数字できっちり説明したいので、金額について端数処理はしないこととします。)
これについて、為替変動がありますので、
- ①1ランド=7.77円の場合(変動なし)
- ②1ランド=8.27円の場合(0.5円の円安)
- ③1ランド=7.27円の場合(0.5円の円高)
の場合で考えてみましょう。
①1ランド=7.77円の場合(変動なし)
やはり為替手数料がかかりますので、ランド→円のレートは
7.77ー0.15=7.62
となります。
よって円に換算すると、
103,984.25×7.62=792,359.985
損益を計算すると、
792,359.985-792,000=359.985
80万円近く投資して、360円しか儲かっていないことになります。
②1ランド=8.27円の場合(0.5円の円安)
為替手数料がかかりますので、ランド→円のレートは
8.27ー0.15=8.12
となります。
よって円に換算すると、
103,984.25×8.12=844,352.11
損益を計算すると、
844,362.11-792,000=52,352.11
となり、それなりに儲かりましたが、こんなにうまくいくとは限りません。
次を見てみましょう。
③1ランド=7.27円の場合(0.5円の円高)
やはり為替手数料がかかりますので、ランド→円のレートは
7.27ー0.15=7.12
となります。
よって円に換算すると、
103,984.25×7.12=740,367.86
損益を計算すると、
740,367.86-792,000=▲51,632.14
5万円も損してしまいました。
他の通貨でももちろんそうですが、外貨預金の場合、
- 円安なら為替差益がもらえる
- 円高なら為替差損が発生する
ということになります。
じゃあレートが同じだったら?ということですが、
金利分が利益になるはずですが、今まで見てきたように、為替手数料や税金が発生するので、5%という、今では信じられないような金利であっても、
もうけは微々たるもの
ということがわかります。
為替手数料がもっと高い金融機関だと、元本割れする恐れもあります。
(ランドの為替変動リスク)
では、今までランドはどれくらい変動したのでしょうか。
こちらのサイトによると、
7.398715円
10月15日の終値が
7.824973円
で、4週間で0.426258円の円安ランド高となっています。
率にして5.76%の変動です。これはかなり高い変動率です。
米ドルが1ドル100円だったのが、4週間後に105.76円になったら、大騒ぎになると思いますよね。
しかも、ランドそのものはここ10年くらいで3~4円/ランドほど下落しており、今後ずっと円安ランド高となる保証もありません。
また前にも述べましたが、為替手数料が徴収されるほか、為替差損があったとしても利息には税金がかかります。
そう考えると、これはかなりリスクの高い投資になると思います。
逆に言うと、これだけリスクがあるから、資金を集めるために金利を高く設定しているとも言えます。
可能性として利益が出ることもあるので、絶対ダメとは思いませんが、私は人には勧めないことにしています。
また、外貨預金は預金保険機構による保護の対象外ですので、金融機関の破綻時には保
護されません。最悪の場合1円(1ランド?)も帰ってこない恐れがあります。
ちなみに、為替差益にも所得税がかかります。
雑所得とみなされて総合課税の対象となりますが、20万円以下であれば原則として確定申告は不要ですので、今回例題で見たケース②の場合、ほかに雑所得がなければ確定申告しなくてもいいことになります。
ただし、雑所得は損益通算の対象とはならないので、ケース③のように、損失が出ても株式の配当などとは損益通算できません。
こういったことを考慮に入れて、投資するかどうか決める必要があると思います。
では、また。
※当ブログでは特定の商品の購入の可否を推奨したりするものではありません。資産運用に当たってはご自分でよくご検討の上、自己責任で選択してください。
当ブログの内容により生じた損害について一切の責を負いかねますのでご了承ください。